我々の産業は約10µmの油膜の上に成り立っている
あらゆる製品を生み出す機械は、直進・回転から生み出されるエネルギーを伝達して動いています。それらは、接触面(クリアランスは10µm以下の場合が多い)に潤滑がないと、円滑に動かすことができません。
潤滑油と摩擦
潤滑油の歴史は古く、ピラミッドを建築した時代に遡ります。ピラミッド建設で欠かせない「大きな石」を運ぶ時、コロを使いオリーブオイルを撒き、滑りをよくしたと言われています。潤滑油は、モノとモノが接触する際に生じる摩擦を抑制・軽減することが目的とされています。現在、潤滑システムにおいても、「摩擦の抑制」は大きな課題として残っています。摩擦は、エネルギーをロスするだけではなく摩耗も引き起こすため、潤滑油は必要不可欠です。潤滑油には、この他にも下記の大切な役割があります。
潤滑油の役割
①摩擦の抑制:油膜で滑りを良くし、摩擦を減らし動力損失も防ぐ
②摩耗の抑制:摩擦を減らすことにより、摩耗の発生も防ぐ
③腐食の抑制:金属表面に付着した油膜で水をシャットアウトし、さびを防ぐ
④温度の抑制:燃焼や摩擦などにより発生した熱を運び去る
⑤洗浄作用:すすや汚れ・スラッジなどを洗い落として分散させ、それらの堆積を抑制する
⑥密閉作用:クリアランスなどが油膜で埋まることにより、エネルギー効率を高め、ガス抜けや水・ゴミの侵入を防ぐ
求められる潤滑油
機械技術の向上に伴い、潤滑油に対する要求も多様化しています。ベースオイルに各種添加剤を加え調合することで、高性能潤滑油となり、多種多様なニーズに応えることが出来ます。
ベースオイルとは
ベースオイル(基油)は、潤滑油のベースとなるオイルで,潤滑油の性能を決める基本となります。鉱物油・合成油・動植物油の三種類に分けられ、それぞれ特長があり、用途も異なります。
・鉱物油
原油から常圧蒸留し、燃料油を精製した際に出る残渣油を、減圧蒸留し精製したオイルのこと。パラフィン系、ナフテン系がある。
【使用例】ギアオイル、油圧作動油、エンジンオイル
・合成油
化学合成によって作られる。ポリアルファオレフィン、ポリアルキレングリコールなど。
【使用例】ジェットエンジンオイル、冷凍機オイル、難燃性作動油
・動植物油
動植物の油分を抽出して得られる。菜種油、パームオイルなど。
【使用例】ボディオイル、圧延油、切削油等の加工油
添加剤について
添加剤には、ベースオイルの優れた性質を「高める」、好ましくない性質を「抑える」、不十分である性質を「加える」役割があります。
添加剤の役割
①酸化防止剤 オイルの酸価を防ぐ
②清浄分散剤 ススの汚れを洗い落とし、オイル中に分散させる。酸を中和する働きもあり。
③油性向上剤 金属表面に付着して、強い油膜を作る。
④極圧添加剤 特に強い圧力が加わった時、焼付きを防ぐ。
⑤さび止め剤 水や酸素をシャットアウトして、鉄のさびを防ぐ。
⑥粘度指数向上剤 温度による粘度の変化を小さくする。
⑦流動点降下剤 低温でも固まらないようにする。
⑧消泡剤 泡の発生を抑え、かつ発生してしまった泡を素早く消す。
⑨乳化剤 水と混ぜて使用し、水と油を混ざりやすくする。
油種別 使用される添加剤例
油種 | 酸化 防止剤 | 清浄 分散剤 | 油性 向上剤 | 極圧 添加剤 | さび 止め剤 | 粘度指数 向上剤 | 流動点 降下剤 | 消泡剤 | 乳化剤 |
ガソリンエンジン油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||
ディーゼルエンジン油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||
船用エンジン油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||
汎用油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
タービン油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ||||
油圧作動油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |
ギヤ油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||
圧縮機油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
冷凍機油 | ✓ | ✓ | ✓ | ||||||
切削油 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
潤滑管理が機械の寿命を決める
潤滑油は、機械の円滑な運転において大切な役割を担っています。
潤滑油を知り、正しい知識を持って適切に管理・運用することで、機械の寿命が決まると言っても過言ではありません。機械の「血液」ともいえる潤滑油をキレイにすることで、機械システム全体が健康となり、生産性の向上やメンテナンスコストの削減を実現することができるのです。
RMFジャパンは、その血液である潤滑油の状態診断から、目標とするキレイ(清浄度)に効率よく到達できるソリューションをご提案し、機械システムの健康状態を保ち、延命に貢献します。