
給油や更油時の「持込」を回避する
コンタミは「持込」「侵入」「発塵」「堆積」の4つの経路から、システム内に混入します。特に、給油や更油時にコンタミを持ち込んでいることは、あまり認識されていません。今回のテーマは、その「持込」を回避するための対策と管理です。
オイルの供給形態-バルクとパッケージ-
オイルはタンクローリーなどの“バルク”か、ドラム缶やペール缶などの“パッケージ”で輸送されるケースが殆どですが、懸念事項・リスクはそれぞれ異なります(下図参照)。リスク 〇=低い 〇〇=中 〇〇〇=高い
懸念事項・リスク | バルク | パッケージ |
クロスコンタミによる影響 | 〇〇〇 | 〇 |
輸送環境からのコンタミ侵入 | 〇〇 | 〇〇 |
貯蔵の安定性 | 〇〇 | 〇〇 |
輸送の安全性 | 〇〇〇 | 〇〇 |
漏れ落ちの危険性 | 〇〇 | 〇 |
在庫劣化の可能性 | 〇〇 | 〇〇〇 |
製品廃棄の可能性 | 〇 | 〇〇 |
輸送コスト | 〇 | 〇〇〇 |
オイルは、下図のように製油所など供給元から工場に届きます。“バルク”は貯蔵タンクに供給するまでの工程で、“パッケージ”は保管する過程で注意が不十分な場合、既に汚染されたオイルを給油または更油することとなり、システム内にコンタミを「持込」してしまいます。では、どのような対策と管理が有効なのでしょうか。

バルクから貯蔵タンクに供給する際の注意点
少しでも「持込」を減らすためには、機械や装置に供給する直前にオイルを濾過してコンタミを除去するだけでは不十分です。オイルをポンプ移送するたびに濾過すること、また貯蔵時には常にコンタミの侵入を抑えることがとても大切です。貯蔵や取扱いにおいて、下記項目が遵守されているかどうか、今一度見直してみてください。
・タンクローリーの注ぎ口を開けたままにしておかない
・充填ホースに適したクイックコネクトを使用する
・配管コネクタを開放状態にせず使用前後には密閉しておかない
・製品の種類に合った専用の充填・排出用ハードを使用する
・ホースの末端をカバーせず 地面に置きっぱなしにしない
パッケージで保管する際の注意点
ドラム缶の種類と特徴
ドラム缶の種類によって、特徴が異なります。それぞれの長所・短所を正確に把握した上での、適切な選定と取り扱いが必要です。(▲メリット、▼デメリット)
・スチールドラム缶
▲ 初期投資額が低い
▲ 損傷がなければリサイクル可能
▲ 広く使われている
▼ 鉄錆とボディの損傷が起こる
▼ 重い
▼ 洗浄が難しい
・プラスチックドラム缶(ポリエチレン製)
▲ 新品は清浄度が高い
▲ 金属のようにへこまない・錆びない
▲ 上部リングが排水しやすい構造に設計
▲ スチールより3割程度軽い
▼ スチールと比べて高価
▼ 一部の添加剤で軟化する
▼ 環境の影響を受けやすい(高温で膨張、低温でひびが入りやすい)
▼ 静電気を帯びてコンタミを寄せつけやすい
▼ 木製パレット上で滑りやすく、釘で穴が開くリスクあり
ドラム缶の保管方法
どちらのタイプのドラム缶を使用する場合でも、コンタミ(主に水分)の侵入から守るためには、保管方法にも注意が必要です。

・できるだけ寒暖差が少ない、低湿度の室内で水平に
保管する。
・通気口を3時と9時の位置にし、油面より下になるようにする
・2個以上は積み重ねない
栓・通気口が空隙部に位置することにより、呼吸作用で雨水や高湿度の外気を吸い込みやすい。
呼吸作用とは・・・オイルが温まり、ドラム缶内の空気と共に膨張すると、油面上の空気が外に抜ける。逆にオイルが冷え、空気と収縮すると、強い吸引状態となり外気を吸い込む。
やむなく縦置きにする場合も、栓・通気口を3時と9時の位置にして水平に置き、上部に水が溜まらないように傾斜させ(図1参照)、さらにドラム缶カバーを用いるとより良いとされています(図2参照)。また、一次的に屋外に置く場合であっても、直接地面には置かず、水が集まるところや直射日光が当たるところは避けた方がよいでしょう。厚板を敷き、前述同様に水平に置いて、ビニールやカンバス布でカバーしてください(図3参照)。

「持込」を回避して劣化促進を抑制
オイルが、機械や装置に供給される前に汚染されていたら、給油・更油の効果も半減してしまいます。むしろ、劣化の促進を加速させてしまうことに繋がります。バルクから貯蔵タンク、貯蔵タンク・ドラム缶から機械や装置へと、ポンプを使ってオイルを移送させるたびに濾過することは、非常に有効です。この目的を満たすために、多くのオフラインフィルタがあります。可搬式のカートフィルタやドラム缶上置き式のフィルタは、新油を含めオイル管理には欠かせないツールです。システムに入ってしまったコンタミに対しての危機感と同じように、その前段階で入り込むコンタミにも意識を向け、システムの健康を害さないよう、キレイなオイルを供給してください。
潤滑技術資料
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