「侵入」への明確な対策
今回のテーマは、機械システムに「侵入」するコンタミへの対策です。コンタミは、放っておくと機械故障の直接的な原因となり、オイル劣化を加速させます。システム内のオイルをクリーンに保つためには、「侵入することを防ぐ=コンタミを入れない」「侵入したものは取り除く=コンタミを除去する」という対策が必要となります。
侵入することを防ぐ
混入経路で一番注意しなくてはならないのは、オイルタンクの通気部(空気孔・給油口)です。
ここは、機械システム内において唯一の外気との接点であり、絶えずコンタミの侵入危機にさらされているからです。システム稼働中、タンクは呼吸をしているかのように、油面が上がったり下がったりを繰り返します。油面が上がるとタンク内の空気は吐き出され、逆に油面が下がると外気を吸い込みます。この吸い込みの際に、コンタミ(水分や固形微粒子)が侵入します。水分については、外気中に湿度として含まれていたものが、タンク内の温度変化により水滴化するものを指します。これらを防ぐためには、エアフィルタ・エアブリーザで、コンタミの侵入自体をシャットアウトすることが大切です。
エアフィルタ・エアブリ―ザの種類
タンクの形状がオープンベント(無弁通気口)であったり、ベントプラグが付いている場合がありますが、基本的に外気と自由に行き来できる構造になっているため、侵入を防ぐ効果は期待できません。また、ブリーザーフィルタキャップについても、中にスポンジ等が入っているだけの簡易構造が多いので、微細なコンタミの侵入まで防ぐことはできません。下記のような、通気部をしっかりと保護できるエアブリーザの設置を推奨します。
・エクスパンションチャンバ
液体を気体に変えたり、圧力を下げるために用いる膨張室を有する
・デシカントブリーザ
乾燥剤入りで、同時に水分除去も可能。色の変化の状態を見ながら交換する
・スピンオンフィルタ
固形微粒子を除去する。目の粗いものから高精度なものまでをラインナップ
・バルーン
外気との接触を完全に遮断。油面の変動によりバルーンが収縮・膨張する
その他注意事項
エアフィルタ・エアブリーザを設置しても、オイルタンクの蓋やハッチカバーがきちんと閉まっていないと、全く意味がありません。ホースが挟まって、半開きのままになっているケースも多くあります。タンク上部が汚れていると、開口時にコンタミが入り込むリスクとなるので、キレイに保つことも必要です。また、エアフィルタ・エアブリーザは設置するだけでなく、定期的に状態を見ながら交換するという適切な管理が大切です。
侵入したものは取り除く
機械システムの稼働に伴い、アクチュエーターなどの動作部やシールが損傷したところからコンタミが侵入したり、クーラーの結露によって水分が侵入したり、さまざまな要因によりシステム内にコンタミ(固形微粒子や水分)が入り込んできます。一度入り込んでしまったコンタミは、取り除くという解決方法しかありません。そして、その取り除く機能を果たすものが、各種フィルタです。
フィルタの種類
フィルタにはいくつか種類があり、役割もそれぞれ異なります。機械システム内の適切な場所に適切なフィルタを設置し、効果的にコンタミを除去することが大切です。
①サクションストレーナー / フィルタ
ポンプの吸込側に設置するフィルタです。オイルタンクからポンプへ向かうライン上の、ポンプ手前に設置することで、ポンプへの比較的大きなコンタミの混入を防ぎ保護します。
②インラインフィルタ
ポンプの吐出側に設置するフィルタです。ポンプから動作部へ向かうラインに設置することで、動作前の油をクリーンにし、制御バルブやシリンダーなど動作部を保護します。保護したい機器の直前に設置するラストチャンスフィルタなどもあります。
③リターンフィルタ
動作部からオイルタンクに戻るライン上に設置するフィルタです。油圧ライン内で発生するコンタミやシリンダロットから混入する外部コンタミを取り除き、タンク内にコンタミが入ることを防止します。
④オフラインフィルタ
油圧ラインの外に設置する、ポンプモーター付きの独立したフィルタです。タンク内のコンタミを除去し清浄度を高めます。水分除去を目的としたフィルタもあります。ライン上での清浄化が不十分な場合や、ライン上にフィルタを設置することが難しい場合などに使用すると効果的です。また独立しているため、ラインフィルタよりも濾過性能の高いフィルタを使用し高精度な濾過を実行できます。
⑤ポータブルフィルタ (フラッシングや新油の充填時など)
上記1~4の恒久的なものに対し、一時的に持ち回りで使用できるフィルタです。オイルタンク内や新既設備のフラッシング、装置の修理やメンテナンス後のフラッシング、新油を充填する際の濾過を行う際などに有用です。
「侵入」への対策は機械やオイルの延命に大きく貢献
機械システム中のオイルへのコンタミ混入経路としては、「侵入」が大きな割合を占めています。一方で「エアブリーザでコンタミを入れない」「入ってしまったものはフィルターで除去する」ことが、非常に明確であり且つ効果も出しやすい対策と言えます。ただし、エアブリーザや各種フィルタを設置さえしていれば、安心というわけではありません。設置にあたり的確な選定が必要です。また、正しい使用方法で運用・管理がなされないと、全く効果が上がらないという事態も起こり得ます。システム全体を俯瞰して見直すことで、「侵入」原因に適切な対策を講じることが、機械システムやオイルの延命に繋がっていきます。