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フィルタの濾過精度について

2023.03.27

技術情報

機械システムにおけるオイル清浄度の改善、また機械やオイルの延命には、オフラインフィルタの適切な選定・運用が重要であるとご説明しました。対象の設備に、最も有効であるフィルタを選定するにあたり、フィルタの性能を把握しておく必要があります。今回は、フィルタの性能を表す要素である「濾過精度」「流量特性」について詳しく見ていきたいと思います。

フィルタの選定

フィルタを使用する際には、フィルタを構成している各部品の材質との化学的な適合性や、オイルがフィルタを通過するときの抵抗を表す流量特性、フィルタが目詰まりして差圧が上昇した時のフィルタろ材(エレメント)の強度、またフィルタハウジング自体の圧力特性など、様々なことを考慮しなくてはなりません。しかし、これらは各アプリケーションによって異なります。ここでは、フィルタユーザーが必ず認識しておかなくてはならない、フィルタが除去できる粒子の大きさ=濾過精度の表示法についてまとめます。

濾過精度の表示法

①メッシュ

細い線材を織った金網の1インチ(2.54 cm)当たりの線数を指します。ただし、金属線を直角に織る平織や綾織ではなく、横線をつめておる平畳織や綾畳織については、1インチ当たりの横線の本数で表します。したがって、金網の目の細かさを表すものではありません。

②公称濾過精度

縦・横糸で形成される網目(孔)の大きさを把握することによって、濾過性能を予測する方法です。織り方の精度により孔の大きさがばらつくので、試験ダストを用いた濾過試験で測定します。例えば「公称10μm」とは・・・

・MIL-F-5504A

 試験ダスト ACFTD* を用い、10μm以上の粒子を質量で98%除去。

※Air Cleaner Fine Test Dust – 米国アリゾナ砂漠にて採取・精製された試験ダスト

・MIL-F-5504B

 10~20μmのガラス球を用い、質量で95%除去。バルブポイント試験法*も規定。

※フィルタエレメントを流体に沈めて、内側から空気圧を加えた時に、網目(孔)から押し出される気泡の圧力を測定し、最大孔径を予測する方法。しかし、これは金網など単純な孔以外は適用不可。

公称濾過精度は、メーカーによって任意に表示されるので、メーカー間での表示の隔たりや実際の性能とも大きな隔たりが生じることから、性能評価値として使用すべきではありません。

③絶対濾過精度

フィルタを抜けるガラス球の最大粒径を測定する方法です。具体的には、ガラス球を含む試験ダストを懸濁した2,000 mlの試験油を、試験フィルタで濾過して分析用メンブレンフィルタに捕捉し、光学顕微鏡でメンブレンフィルタ上に残されたガラス球のうち最大径のものを測定します。その最大径が、規格で要求されている粒径以下であることを証明するという評価法です。しかし、① シングルパス試験であること ② フィルタの目詰まりまでを見ていないこと ③ 継続的な異物の侵入がないことから実際の使用条件とは異なり、フィルタ使用時の濾過性能を表していません。

④β値(ベータ値)

フィルタろ材の孔径表示だけで、濾過精度を表してきた01~03の評価法では不十分となり、開発されたものが「マルチパスフィルタエレメント性能評価法」です。これは、孔の大きさを予測するものでなく、装置内を汚染する実際の異物に近い試験ダストを用いて、フィルタエレメントがオイル中の異物を除去し、保持できる能力を評価する方法です。そして、この性能試験で求められるフィルタの性能値を「β値」と言い、下記の通りに定義されます。

βx(c) =フィルタ通過前のx(c)μm以上の粒子数 ÷ フィルタ通過後のx(c)μm以上の粒子数

x : 濾過により捕捉できる最小粒子の大きさ(µm)c : NIST(米国国立標準技術研究所)により、粒子径が認証されていることを示す。

試験回路は、①試験ダスト投入回路と②試験回路から構成されています。試験ダスト投入回路の作動油に、あらかじめISOメディアムテストダスト(MTD)を懸濁し、循環させておきます。試験開始と同時に、試験ダストを含んだ作動油を試験回路へ投入し、試験フィルタ通過前と通過後からサンプリングして、パーティクルカウンタで粒子サイズと数を1分以下の間隔で計測します。そして、あらかじめ定めた最終差圧に達するまで(=目詰まりするまで)のパーティクルカウンタの計測結果を、粒径ごとに平均してβ値を算出します。

β値の高いフィルタほど、清浄度は良くなり、摩耗によるコンタミ発生量が少なくなります。そのため、マルチパスフィルタ性能試験法で求められる集塵量が少なくても、機械寿命が長くなります。逆に、β値の低いフィルタほど、摩耗によるコンタミ発生量が多くなり、集塵量が多くても、機械寿命が短くなります。※マルチパスフィルタ試験法では、上記β値以外に集塵量も求められますが、フィルタの寿命を表すものではありません。

流量特性(圧力損失)とは

流量特性とは圧力損失とも表され、オイルがフィルタを通過するときの抵抗、主に粘性抵抗を示します。フィルタハウジングに、エレメントやアクセサリ(差圧指示器やバイパス弁など)を装着したフィルタアッセンブリの流量特性は、流量に対するエレメントとアッセンブリの圧力損失を加えたものになります。フィルタアッセンブリの許容圧力損失はメーカーによって異なり、エレメントの圧力損失はオイルの温度変化などアプリケーションによっても大きく異なりますので、適正なフィルタの選定にはこれらを考慮する必要があります。

フィルタの性能(表示法)を正しく理解する

フィルタ性能の表示法にはいくつかの基準が存在し、例え同じミクロン数で表記されていたとしても、性能が同じとは限りません。フィルタを適正に選定するためには、まずフィルタ性能を理解しなくてはなりません。従来の性能評価方法であったメッシュ・公称濾過精度・絶対濾過精度ではなく、「β値」で選定することが重要ということがご理解いただけたかと思います。β値は、実システムに即したオイルの流れと、シリカ系粒子を試験ダストとして用いることで、試験機関によって測定結果のばらつきも少なく、繰り返し性も良好であることから、グローバルに活用されている最も信頼性の高い評価法です。β値をご参照頂き、対象設備に最適なフィルタの選定・見直しにお役立てください。

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